FUJIFILM GFX100Sはフランジバックが短いミラーレスカメラなので、マウントアダプターを利用することで様々な種類の一眼レフカメラのレンズを装着することが可能です。
ただしGFXシリーズのセンサーサイズは、フルサイズと言われる35mm判のセンサーよりも1.7倍大きい中判センサー(ラージフォーマットセンサー)を搭載しています。
そのため35mm判レンズをマウントアダプターを介して使用する場合、多くの場面でTOP画像のようにケラレ(センサーサイズに対してレンズのイメージサークルが不足し、画面の周辺に黒い写り込みが出てしまうこと)が発生してしまいます。
ただし、35mm判レンズの中にはGFXシリーズで使用してもケラレが発生しないレンズも存在します。
- 1 GFXでケラレない35mm判レンズ(建築写真家なので広角レンズ中心)
- 1.1 キヤノンのティルト・シフトレンズ「TS-E」シリーズ
- 1.2 SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art
- 1.2.1 A:FUJIFILM GFX100S+SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 12mm使用時(ラージフォーマット+レンズプロファイルあり)
- 1.2.2 B:FUJIFILM GFX100S+SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 17mm使用時(ラージフォーマット+レンズプロファイルあり)
- 1.2.3 C:FUJIFILM GFX100S+SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 12mm使用時(35mmフォーマットモード+レンズプロファイルあり)
- 1.2.4 ラージフォーマットで17mmで使用するか、35mmフォーマットモードで12mmで使用するか
- 1.2.5 D:FUJIFILM GFX100S+SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 12mm使用時(ラージフォーマットからトリミング+レンズプロファイルあり)
- 1.2.6 歪曲(ディストーション)について
- 2 まとめ
GFXでケラレない35mm判レンズ(建築写真家なので広角レンズ中心)
キヤノンのティルト・シフトレンズ「TS-E」シリーズ
以前から言及していますがキヤノンのティルト・シフトレンズ「TS-E」シリーズは、GFXシリーズで全くケラレることなく使用可能です。
ケラレないどころかさらにシフト調整も可能なことから、イメージサークルはGFX純正のGマウントレンズよりも広いことが伺えます。
同様に、ニコンのティルト・シフトレンズ「PC」シリーズも、GFXシリーズでケラレなしで使用できるはずです。(自分は試したことがないですが)
SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art
今回の記事の本命はこちらの「SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art」になります。
元々このレンズをGFX100Sで使う予定はなかったのですが、意外とデザイン的にもGFXと相性がいいですね。
写りに関しては、35mm判用のレンズですので当然ケラレが派生します。
ただし、12mmから24mmのズームレンジのどこからケラレが発生するかによってこのレンズをGFXシリーズで使う価値が大きく変わってきます。
A:FUJIFILM GFX100S+SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 12mm使用時(ラージフォーマット+レンズプロファイルあり)
下記の作例『A』は、FUJIFILM GFX100SにSIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Artを装着し、最広角12mmで撮影したものです。
盛大にケラレが発生してますね。
画面上下で波打ってケラレているのは、SIGMA 12-24mmの固定式フードの花型が影響しているんでしょう。
ではこの状態からケラレが発生しなくなるまでズームしていきます。
B:FUJIFILM GFX100S+SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 17mm使用時(ラージフォーマット+レンズプロファイルあり)
17mmまでズームした時点で、ほぼケラレが発生しなくなりました。
17mmをGFXシリーズで使用すると35mm判換算約14mm相当になります。
つまりSIGMA 12-24mm F4 DG HSM | ArtをGFXシリーズで使用する場合、35mm判換算14mm-19mm相当のズームレンジでケラレなく使用可能ということです。
正直言って、35mm用の超広角ズームレンズをGFXでここまで広角域で使用できることに驚きました。
C:FUJIFILM GFX100S+SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 12mm使用時(35mmフォーマットモード+レンズプロファイルあり)
GFXシリーズには、35mmフォーマットモードという撮影時に自動で35mm判の画角にクロップする機能があります。
GFX100Sでこの機能を使うと素の状態(約1億画素)より画素数は6000万画素に減りますが、35mmフルサイズカメラでこのレンズを使用した時と同じ元々の画角(12-24mm)でレンズを使用することができます。
35mm判ですので、アスペクト比は3:2になります。(ラージフォーマットのアスペクト比は4:3)
もちろんケラレは発生しません。
実際に35mmフォーマットモードで撮影したものが作例『C』です。
これだと他社フルサイズカメラでSIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Artを使用した場合と同じであり、わざわざGFXで使用するメリットが無いように思いますが、富士フイルムの色再現(フィルムシミュレーション)で他社製レンズを使用できるということが大きなアドバンテージかなと思います。
ラージフォーマットで17mmで使用するか、35mmフォーマットモードで12mmで使用するか
ではここで一つの疑問が発生します。
ラージフォーマットで17mmで使用するのか、35mmフォーマットモードで12mmで使用するのか、どちらが良いでしょうか?
作例『B』のようにラージフォーマットでケラレが発生しない17mm(35mm判換算14mm)と、作例『C』のように35mmフォーマットモードで12mmで使用した場合だと、作例『B』はアスペクト比の関係で縦に少し広くは写りますが、横ではかなり写る範囲が狭くなってしまい、ラージフォーマットで使用するうまみが少ない気がします。
D:FUJIFILM GFX100S+SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 12mm使用時(ラージフォーマットからトリミング+レンズプロファイルあり)
で、冒頭の作例『A』をよく見てみると、ケラレが発生していない部分は35mmフォーマットモードの12mmで写る範囲よりも広い気がします。
では作例『A』をケラレのギリギリまでトリミングしてみましょう。
その結果が、作例『D』になります。
作例『B』や『C』よりも広い範囲を写すことができました。
おそらく35mm判換算で10~11mmくらいに相当してそうですね。(トリミングの際のアスペクト比は、画像をギリギリまで広く写せるようにした結果、4:3から3:2になりました)
画質的にも破綻している部分もないようなので、後処理の手間を厭わない場合には作例『D』のように、「ケラレ状態からトリミング」という撮り方もありかもしれません。(イレギュラーな撮り方ですが)
歪曲(ディストーション)について
ちなみに今回の検証ではレンズプロファイルを使用したのみで、個別の歪み補正は一切使用していない状態で検証しています。
本来性能が保証されないイメージサークル外の歪曲の状態を含めて、改めて「SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art」の歪曲性能の高さが浮き彫りになった形かと思います。
まとめ
2022年8月現在、富士フイルムよりGFXシリーズ(Gマウントレンズ)で発売されている純正の最広角レンズは「GF23mmF4 R LM WR」(35mm判換算19mm相当)なので、単純に画角だけでいうと「SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art」(35mm判換算14mm-19mm相当※ケラレなしで使えるズームレンジ)の方が優れています。
富士フイルムは2022年中に、GFXシリーズ初の広角ズームレンズ「GF20-35mm」(35mm判換算16-28mm相当)の投入を予定していますが、「SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art」はそれよりも広角域を写すことが可能ですので、そういう意味ではこのレンズには引き続き価値があるのかもしれません。
ただしこれらの話は画角に関してのみの話です。
純正GFXシリーズのレンズは、1億画素を念頭に開発設計されているため非常によく写ります。
おそらく「GF20-35mm」も画質に関しては「SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art」を遥かに凌ぐものになると期待しています。
SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | ArtはGFXシリーズでも充分活用できるレンズ
話が逸れましたが、結論としては「SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art」はGFXシリーズでも充分活用できるレンズです。
条件付きではありますがGFX本来のラージフォーマットで使用することも可能ですし、35mmフォーマットモードでフルサイズカメラと同じ感覚で扱うこともできます。
富士フイルム自慢の色再現設定「フィルムシミュレーション」を、他社製レンズで35mm判(もしくはそれ以上)で使用できるということはとても魅力的です。(しかも超広角で!)
35mm判のレンズの中でも望遠レンズはGFXのセンサーサイズをカバーできている場合が多いと噂で聞いていましたが、今回のように超広角ズームレンズでも広角域で使用可能だったことは驚きでした。
思うにSIGMAの一眼レフ用のARTシリーズは、特に画質やコンセプト(ゼロディストーションなど)にこだわって設計されているためイメージサークルが余分に大きめに作られているんじゃないでしょうか。
それらも今回の結果の一因なのかもしれませんね。