ギア雲台 ARCA-SWISS(アルカスイス) D4 レビュー

建築写真家の撮影機材をご紹介。

今回は、ギア雲台「 ARCA-SWISS (アルカスイス)D4 ギアヘッドクイック」についてレビューします。

過去記事の「ギア雲台 Leofoto G4 レビュー」にてチラッと名前を出しましたが、おそらくLeofoto G4が模倣したであろうオリジナルのギア雲台が「ARCA-SWISS D4 ギアヘッドクイック」になります。

とても素晴らしい雲台なのですが、所有している方が非常に少ない理由は、その雲台としては圧倒的な高価なプライスによるものでしょうかね。

国内販売価格で16万円台と、普通の方からすると二度見しても足りないような驚きの値段なのです。

「雲台にそんな金額払えるか!」って方にはもっとコスパのいいギア雲台(Leofoto G4)もありますのでそちらをお勧めします。

ギア雲台 ARCA-SWISS D4 ギアヘッドクイック

外観

雲台としての質感は非常に高いです。
ギア操作のノブがゴムリングなのは好みの分かれるところ。個人的には金属の方が良かったかな。

クランプ部の下側に高精度な水準器が2個装備されており、アイレベルまで三脚を高くした場合でも一目で水準器で水平(垂直)を確認する事が可能です。
カメラのホットシューにアクセサリーの水準器(レベラー)を装着して水平垂直を測る方法だと、アイレベルやハイアングル時に水準器を確認しにくく非常に不便なのです。

また、貴重なホットシューを水準器のアクセサリーに使用しなくてもよいので、その代わりにハレ切りのアクセサリーなどを使用でき非常に効率的です。
建築写真撮影においてこれ程重要で便利な機能はないですし、もはやこの二つの水準器(高精度な)の為にARCA-SWISS D4 ギアヘッドクイックを購入したと言っても過言ではないです。

ギア雲台としてはまずまず軽量

重量は970gと、ギア雲台としてはまずまず軽量といったところ(自由雲台と比べたら重いですが)

同じギア雲台である、マンフロットギア雲台410は1.22kg、Leofoto G4は690g。

重量に関しては、Leofoto G4の軽量さが目を惹きますね。

ギア操作

操作感ですが、ノブのギア操作は非常に滑らかで重量級の広角系機材を積載時にも遊びや引っ掛かりは感じずスムースに操作できます。

ただし、粗動ノブがトンガリ型なので極端にスウィングした場合、微動ノブ(丸型の方)と干渉します。

自分は極端な見上げや見下ろしなどでは使用しないのであまり気になりませんが、天体撮影などをされる場合は少し注意が必要かもしれませんね。

クランプはもちろんアルカスイス規格だけど…

アルカスイス規格を世に送り出した本家本元のアルカスイス社なので、クランプはもちろんアルカスイス規格なのですが、クランプの写真を見ていただければお分かりただけるように、少し曲者な仕様になっております。

現在のアルカスイス製品の純正クランプは2段式になっており、上段側が従来のアルカスイス規格が適合するアリガタで、下段側が新たにアルカスイス社が策定したFixという規格のアリガタになります。

今やほぼ世界共通とまでなった従来のアルカスイス規格に加えて、何故新たなFixという規格を作ったのかは謎ですが、2種類のプレートに対応できるようにクランプも2段式にしているという訳です。
正直Fix規格なんて全く普及していないので、普通に従来のアルカスイス規格のみの1段式のシンプルなクランプにして欲しかったという気持ちでいっぱいです。

KirkのクランプやRRSのレバークランプに換装を検討していますが、今のところなんだかんだそのまま純正クランプで使用しています。

ギア雲台 ARCA-SWISS(アルカスイス) D4
純正クランプは2段式。一般的なアルカスイス互換なのは上段側のアリガタ
ギア雲台 ARCA-SWISS(アルカスイス) D4
真横から見える位置に水準器があるので、アイレベルやハイアングルでの水平垂直出しが非常にやりやすい
ギア雲台 ARCA-SWISS(アルカスイス) D4
道具としてのデザインが素晴らしくGITZOの三脚とも非常にマッチします
ギア雲台 ARCA-SWISS(アルカスイス) D4
雲台として扱い易いサイズで、GITZOシステマティック三脚と組み合わせても丁度よい大きさ

雲台としての性能

ARCA-SWISS D4 ギアヘッドクイックの公式の紹介文に、「水平方向のティルト軸(X 軸)と垂直方向のティルト軸(Y 軸)の基本が同一で、カメラを回転させるパンニングの中心軸もX 軸Y 軸の基本の真上に位置しますのでカメラの動きを最小限に抑え、向きを調整することができます」と記載されています。

要はARCA-SWISS D4 ギアヘッドクイックは、雲台に装着したカメラ位置が三脚の中心に位置しており、ギア操作してもカメラの光軸のズレが少ないという事です。

光軸のズレが少ないという事は建築写真撮影では結構重要で、三脚で被写体の中心位置を合わせた際にカメラの中心位置も合うという事になります。

対照的にマンフロットのギア雲台シリーズの構造は、雲台に装着したカメラ位置が三脚の中心に位置せず、被写体の中心を合わせにくい上にギア操作をする際に光軸が大きくズレてしまうので、建築写真撮影では非常に使いにくいのです。

建築写真撮影では、ARCA-SWISS D4 ギアヘッドクイックのギア雲台の構造はとても優れております。(Leofoto G4も同一タイプの構造です)

 

実際の使用感ですが、建築写真撮影の現場で半年ほど使用してきましたが、雲台としての固定力・保持力に問題はありません。

バランスが前重心になるような望遠系の重量級機材を使用していないのでその場合は分かりませんが、広角系の重量級レンズとカメラの組み合わせでは不満はなく非常に優秀だと思います。

今のところギア部分の変な挙動や引っ掛かりなどは、一切感じた事はありません。

購入前はパン軸のギア操作まで可能な、「ARCA-SWISS D4 ギアヘッド パンクイック」と迷ったのですが、パン操作に充分な粘りがあり精密なパン調整ができるので、「ARCA-SWISS D4 ギアヘッドクイック」を購入して良かったと思っています。

純正のクランプに関しては、カメラを固定するのにそれなりの回転数が必要で少し不満はありますが、Kirkの素晴らしいクランプと比べるのはかわいそうなので良しとします。

不満点

購入前、Leofoto G4と同じようにクランプを回転させ、クランプノブをレンズ側に持ってくることで誤操作を防止しようと考えてましたが、結論から言うとそれはできませんでした。

Leofoto G4と異なり、クランプを回転させてもクランプのパン調整ノブは一緒に回転しないので、クランプノブとパン調整ノブが上下に並んでしまい非常に操作しにくいのです。(言葉で書くと分かりにくいな)

そのため手前側にクランプノブがある状態で使用しているので、誤操作でカメラを落下させないように注意して運用しています。

総評

中々のお値段なので購入するのには結構勇気が入りましたが、非常に満足しています。

まずデザインが最高にかっこいいですよね。
服装や持ち物に気を使っていないカメラマンも多いですが、自分はそういうのは嫌なので単純に道具としての性能だけでなく、モノとして「カッコいい」っていう付加価値は大事だと思っています。

もちろんかっこいいだけでは仕事道具としてダメですが、ARCA-SWISS D4 ギアヘッドクイックは建築写真撮影の現場で求められる性能(ギア操作・水平垂直を測る)についても申し分ないのでとても気に入っております。

ただ、やっぱりこの16万円代という値段が適正なのかと言われると高すぎると思いますね。

自分はアメリカから個人輸入で購入したのでそこまでの値段はしなかったのですが、それでも雲台としては非常に高価で、仕事で必要な道具でなければ購入しなかったと思います。

今だったらLeofoto G4も選択肢にありますので、ギア雲台が欲しい方にはそちらも全然ありだと思います。

また機会があれば、ARCA-SWISS D4 ギアヘッドクイックとLeofoto G4の比較記事も作成しようかと思います。

それでは今回はこのへんで失礼します。